11.なぜ日本語を学ぶの?

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中華街のチャイナドレス嬢も
顔はヨーロピアン
今回の旅で一番感銘を受けたのが、
この国の人たちが、自国他国を含め、
文化や芸術に純粋な関心を持っているということだ。
人間って、こんなふうに、ただ純粋に
文化なんてものに入れ込めるもんなんだ~と
変な感心をした。
日本ではなんだかんだ言って、
「生産」を軸に社会が動いている気がする。
教育も勉強も習い事も、
丈夫な身体をつくり、
将来有利に働けるようためにやっている気がする。
その価値観が身にしみついている人間には、
キューバの異なる価値観は、はじめ、意味がわからなかった。
キューバでは縁あって、
2つの、社会人向け日本語クラスにおじゃました。
日本語を学んでいる人たちがいると聞くと、
どんな人なの? とちょっと興味しんしん。
私は日本好きなので、
日本に関心を持ってくれる外国人を見ると
うれしくて仕方ないのだ。
で、日本語クラスなので、
生の日本人(*^_^*)としゃべることも
多少メリットがあるのではないかと、
自分で勝手に前向きな解釈をして、
少々見学をした後、先生に頼んで、
生徒たちに日本語で質問をさせてもらった。
質問は「あなたはどうして日本語を勉強しているのですか」というものだ。
これまで訪れてきたアジアの国では、
日本語の勉強をする人は、日本に行きたい、
できれば日本企業で働きたい、という目的が、
主にせよ従にせよある人がほとんどだった。
しかし、遠き国キューバでは、
日本に来ることはまず不可能といって間違いないだろう。
よほどずば抜けた音楽の才能があるとか、
成績が飛びぬけて優秀であるとか、
何かがないと、普通のキューバ人は日本には来られない。
月収の平均が2000円である。それも生活でかつかつなのだから、
「旅」というのは国内さえもほとんどできないのだ。
社会主義国キューバには、日本企業の進出も、まずないし、
日本人観光客も在住者も少ない。
だから、いったい、なぜ、日本語を勉強しているの?
というのは私の素朴な疑問である。
以下は「カサ・デ・アジア(アジアの家)」の
日本語クラスの生徒たちの答えである。
●日本のマンガが好きだから
●日本の音楽、文学、習慣、お茶や能や歌舞伎が好き
●ドラゴンボール、デスノートなどが大好きで、自分でもアニメを作っている
●日本のアニメが好き。ドラゴンボール、ナルトなど
●武道が好きで15年やっている。居合道、剣道、忍術など
●日本の音楽が好き。ピンクレディ、スピッツ、ドリカムなど
●任天堂のゲームが好き。たくさん持っている
●日本のアニメが好き。ブリーチなど
●戦国時代が好き。織田信長、武田藩など
●日本の文学が好き。三島由紀夫の「金閣寺」、大江健三郎の「個人的な体験」など
まだまだ片言の日本語で、彼らは話してくれた。
日本のアニメは地球の裏側でまで人気なんだなあとか、
そういう感想は感想として、
しかし、アニメが好きだからって、任天堂が好きだからって、
なんで日本の「言葉」まで勉強するのだろう。
日本語クラスの生徒たちは、
町で観光客に声をかけて金をせびろうとする人種とはまた全然違う。
行く予定も、使う予定もないのに……と、
「勉強=目的のためのもの」と信じ込んできた私は思うのである。
彼らの勉強の様子を見ていると、
日本語というのは実に難しい言語だと思う。
私がスペイン語を学ぶより、何十倍もむずかしい。
それなのに。
アニメが好きだと言った若い男の子が、
休み時間に黒板に「糞」という漢字を書いて見せた。
私がきゃあと言って笑うのを、可笑しそうに見ている。
キューバ人の日本語の先生が「何と読むんですか?」と聞いている。
彼はただ面白くて、漢字をたくさん覚えているのだそうだ。
彼らが、子どものように純粋な興味だけで
けっこう真面目に勉強していることに感心した。
それに、他国の文化や芸術に素直な関心と尊敬を持って、
学ぼうとする人が多いことに驚いた。
こういうと語弊があるのかもしれないけど、
アジアの国々を見ていると、
生活に余裕がないと文化や芸術に目が向かない気がする。
それからまた、いわゆる先進国である日本でも、今や生活に追われ、
他国の文化や芸術を純粋に尊敬し面白がるという
気持ちの余裕がないように思える。
キューバでは、2人目の子どもを持つのをためらうくらい、
生活はかつかつだが、
多くの人が、日本に限らず
さまざまな国の文化や芸術を学び実践している。
町の広場や路上で
太極拳ほかさまざまな中国武術系の動きをやっているグループを見かけたし、
バレエやフラメンコはもちろん、ベリーダンスなどのクラスも見かけた。
また、木刀を持って柔道着みたいなのを来て歩く黒人男性がいたので、
「剣道?」と聞いてみると「合気道」と言う。
地球の反対側で、日本古来の武術が学ばれているというのは感動(T_T)。
学びたい人がいることとと同時に、学べる場があるということ。
キューバ、すごい。
このような路上で目にする異文化だけでも数多く、
しかも、人種が色とりどり、
まっくろの黒人や目のパッチリした金髪西洋美人が入り混じって、
太極拳のゆるやかな動きに身体をくねらせる様子は、圧巻だ。
前述したビクトリアの家に初めて行ったとき、
日本人が来たと言って彼らがあげた「日本のこと」数々に私は驚いた。
しかもその単語はほとんど日本語だった。
将軍、座頭市、三船敏郎、羅生門、丹下左前、芸者、お茶、箸、盆栽、凧、忍者、広島、長崎、ハラキリ、瀬戸大橋、ロボット、たまごっち……
何と多くのことを、
この地球の反対側の人たちが知っているのだろうと思った。
「日本の発展(デサローヨ・デ・ハポン)」というテレビ番組が
月に2回放映されているとか話していた。
しかしたとえ放映されていても、関心がなければ見ないだろう。
(国営なので番組に片よりはあるだろうが、
テレビはかなり昔からほとんどの家庭にあるようだ)
「タマゴッチ」とか「ゲイシャ」とかいうことばが、
スペイン語しか話さないキューバ人の口から出てくることが、
私にはうれしくてこそばゆいようで、微笑がもれてしまった。
ごく普通の下町に住む、40-50代の一般庶民である。
ただ行き違って、道を聞いただけの人とその家族である。
東京の千住に住む私の隣人に、キューバとは? と聞いて、
これだけの数の何かが出てくるだろか。
平均月収が日本円にして2000円だったとしても、
キューバはいわゆる「貧しい国」ではない。
精神的な豊かさというのだろうか、そんなものを、私は感じた。
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